春待つ花のように
「ノアルという薬が欲しいんです」

「そんな薬は無い」

「私の体を貴方に差し出したら、その薬をいただけますか?」

 ゼクスの顔が一気に無表情になる。腹立たしい。何を考えそんなことを言っているのか。

 ゼクスはエマの頬を叩くと、怖い顔をした。

「自分の体を安売りするな! 買い物には付き合うが、薬を悪用する気なら、その場で切り捨てる」











 街を歩いている2人に会話はない。エマが先頭を歩き、ゼクスがすぐ後ろを怖い顔で歩いている。

 ある建物の前で彼女は立ち止まると、ゼクスの顔を見た。

「ここに入りましょう」

「は?」

「看板はありませんが、ここは逢引によく使われる場所だそうです」

 エマの言葉にゼクスの頬は強張る。レティアの部屋で話したことを忘れたというのか。

「聞いていなかったのか? 俺は…」

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