春待つ花のように
「私も! 貴方に抱かれるつもりはありません。ただ誰にも聞かれたくない話がある。それだけのことです」

 彼女はそう言うと、建物の中に入っていく。入り口のドアを開けると、室内は暗い。

 受け付けで部屋の予約をとると、金を払い、鍵をもらう。そして鍵に書いてある番号の部屋に向かうのだった。

 部屋は大きなダブルのベッドがあるだけ。他には何もない。逢引に使っている場所というのは本当らしい。

「わざわざこんな所に来なくても…」

 ゼクスはベッドに座りながら言う。

「宮殿では誰に聞かれているか、わかりませんから」

「ロマに告げ口する人間が多いってこと?」

「国王に気に入られて出世しようと企んでいる人間は多いです。逆に国王に睨まれたら、使用人以下の扱いをされます」

 エマの口調に何か引っかかりを感じるゼクス。『使用人以下の扱い』それは彼女自身のことを言っているのだろうか。

「もしかしてそれって…」

「私もその一人ということです」

 ゼクスは目を細めると、彼女の次の言葉を待った。
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