春待つ花のように
10年前のバルト暗殺のとき、ロマのために活躍した彼女がどうして今現在は使用人以下の扱いになるのだろうか。

 それは昨日の夜見た、彼女の手首の傷と何か関係があるのだろうか。ゼクスの頭はいろいろなことを考えてしまう。

「国王は私がアスラン派の残党と密通していたと思っているようです」

「え?」

 ゼクスが驚いた声をあげると、エマは自嘲した笑みを浮かべる。しかし瞳は悲しげだ。

「もしノアル様が生きているなら、これをお渡しください。このペンダントはテーラ様から会えることがあったとき、手渡して欲しいと言われたものです」

 懐の中にしまっていたペンダントをエマは彼に渡した。

 ゼクスは受け取ると、急に不安に駆られた。なぜかエマが遠くに行ってしまうような気がしたからだ。

 彼女がどうしてこれを持っていて、ノアルに渡そうとしたのだろうか。

 宮殿で話をしていたときは、彼女はノアルに直接渡す気でいたはずだ。

 ノアルに会いたい、そう会話から感じた。しかしどうして今、自分にこのペンダントを渡したのだろうか。
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