春待つ花のように
「なぜ、僕が一人でいるかわかりますか? エマ隊長殺害命令が出ているって知っているなら、僕が一人で隊長と悠長に会話していると思いますか?」

 エマの顔色が一気にかわると、ロイはニヤリと笑った。

「最初からわかってて…」

「エマ隊長は芝居が下手ですね。僕のほうが一枚上手だったってことですかね」

 ロイはケラケラと声を出して笑うと、彼女が出てきた建物の中に入ろうとする。

「ちょっと!」

「エマ隊長、僕にしておきなよ。あんな裏切り者なんか忘れてさ…」

 ロイはそう言うと彼女に背を向けたまま、建物内に入っていった。建物の中は血の臭いがこもっている。

 ロイは受付を通り過ぎ、長い廊下に出ると遠くにいる人間を睨み付けた。

「流石、もと護衛官だけあってお強いですねえ、ゼクスさん」

 大きい声で言うと、ニヤリと口を緩めた。

「丸腰の相手に失礼なんじゃないの? こんな大勢は…」

 ゼクスは腕から流れ落ちる血を止血しながら、ロイに微笑んだ。
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