春待つ花のように
「レイから聞いているわ。あの坊やと恋仲なのでしょう?」

 カインはレティアとしばらく見つめあうと、軽く微笑んだ。彼女の目は信じてもいいような気がする。この場は彼女に任せてもみようとカインは思った。

「あの…」

 状況がいまいち飲み込めていないマリナが、不安そうに声を出すと、レティアは彼女の前に立った。

「今までごめんなさいね」

 申し訳なさそうに言うレティアに、マリナは不思議な顔をする。今までの彼女からは考えられないような発言だ。何が起きているというのだろうか。

「時間がないわ。早く…」

 レティアに言われるとカインは頷く。

「マリナ様、行きましょう」

 カインはマリナの手を取ると、部屋を出て廊下を走り出した。いくら王妃という立場でも、そんなに時間は稼げないだろう。

 宮殿から少しでも早く遠く逃げれるためには、上級の護衛官しか知らされない隠し通路で逃げるしかなさそうだ。
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