春待つ花のように
 カインは迷うことなく、隠し通路に向かい始めた。

「あの…」

「詳しい事情は無事に宮殿を抜けられたらお話しますから」

 カインはすぐ後ろを走っているマリナにそう言うと、人の気配を察知しながら通路までのルートを頭の中で検索し始めた。












「よろしいのですか?」

 ユズキがレティアに声をかける。誰もいなくなったマリナの部屋を眺めているレティアは、後ろに立っている彼の方にクルリと振り返った。

「何のことかしら?」

「国王の意志に反することをしたら…」

「ユズキが守ってくれるのでしょう?」

 レティアは扇子を広げて口もとを隠して言う。彼はため息をつくと、苦しそうな表情をする。

「心にもないことを言わないでください」

 ユズキは小さな声でそう言うと、彼女に背を向けて部屋を出て行った。

 カインたちが走っていった方とは逆の廊下を選ぶと小走りで追いかけている振りを始めた。
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