春待つ花のように
 今は彼らが少しでも遠くに逃げられるように芝居をしなくてはならない。レティアがそう望んだから。

 どうして彼女はいつも自分が辛くなる選択ばかりをするのだろうか。彼女が何を考え、何を望んでいるのか。

 知りたいと思うのに、彼女は心を開いてはくれない。開いてくれたと思っていても、それが本心かどうか曖昧な表現をすぐにしてくる。

 信用されていないのだろうか。それとも誰か他に頼れる人がいるのだろうか。

 ユズキは、レティアの護衛官になってから9年が過ぎる。

 ロマが国王になってしばらくしてから、ロマから直接任命された。バルトが国王だったときから宮殿で働いて人間たちのほとんどは、ロマが国王になってから殺されたり、国外追放になった。

 それでまだ15歳だった幼いユズキが護衛官として働けたのだ。

 24歳になった今もレティアの傍で護衛官をしている。ずっと彼女の傍で働いているのに、彼女の考えがわからない。

 他に頼れる人間も思い当たらない。

「おい、どういうことだ! 国王に呼ばれていない上に裏切り者に逃げられるとは!!」

 廊下を歩いていたユズキの肩を思い切り掴むなり、ロイは大声で怒鳴った。ユズキは肩に置いてある手を払うと、頭を下げる。
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