春待つ花のように
「さっきは『復讐はするな』って言ったけど、本当は自分に言い聞かせてるみたいなもんだ。ロマは関係ない人を多く殺した。父だけで良かったのに…。ロマはあんなに人を殺しておいて、国王になった。それが許せない」

 拳を握り締めるノアル。復讐はしない。そう決めた。復讐をしても、結局自分もロマと変わらなくなってしまうから。

 頭ではそう理解していても、憎しみだけは取り除けない。それは10年経った今も。

 目の前で死んでいった妹の顔が忘れられない。何の罪もない妹が、彼らの革命とやらの犠牲になった。

 父・バルトが死に反乱が終わればいいのに、ロマは宮殿内を逃げ惑う人々も切り捨てた。それに背を向けて逃げた自分も悔しかった。

「ノアル…私には今までノアルの苦しみがわからなかった。だけどこれからは少しずつでいいから、私にもその苦しみをわけて」

 ノアルは寂しく笑うと、ローラのことを抱きしめた。

「ありがとう」












「ノアル王子、大変です!」

 勢いよく部屋のドアを開けるなり、シェリルが大声で叫ぶ。

 ベッドで横になっていた8歳のノアルは、パッと瞼を持ち上げると軽やかな動きでベッドから出て立ち上がった。
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