春待つ花のように
「何かあったの?」

 尋常じゃない彼女の表情に、息の荒い呼吸。何か悪いことがあったに違いない。

 幼いながらにそう察知するノアル。真剣な表情でシェリルを見る。

 彼女は走ってノアルの前に来ると、ベッドの足元に置いてあるガウンと手に取り、彼の体にかけた。

「国王が暗殺されました。ここは危険です。早く逃げましょう」

 シェリルの言葉に、ノアルの体が硬くなる。

 父上が殺された…。

 彼はゆっくりと窓に視線を動かす。夜中なのに外が明るい。一体これはどういうことなのだろうか。

 ノアルは小走りで宮殿の庭先が見える窓に近づくと、力を入れて窓を開けた。外には大勢の人間が火矢をもってこちらに狙いを定めている。

 このままでは殺される。

 ノアルは窓から離れると、ベッドの横に置いてある剣を握り締めるとシェリルと一緒に部屋を飛び出していく。
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