春待つ花のように
寝る時間になってもローラは帰ってこなかったが、きっとノアルの部屋にいるのだろうと思い、そんなに心配はしなかった。

　しかし今の彼の様子だと、ローラは昨日、外出してから帰ってきていないということになる。

　イブは手を止めると、昨日の男を思い出そうとした。

「骨格のいい男がローラに話しかけてて、それから彼女の様子がおかしくなったの。それで店が閉店するなり何も言わずに飛び出して行って…」

『骨格のいい男』。ノアルは心の中で呟く。

　話しかけられ、ローラが行き先も告げずに飛び出す…。ずっと一緒に生活をしていたイブにも言えないこと。

　それは自分の過去と関係がある可能性が高い。

　『骨格のいい男』に心あたりがある。きっとカインだろう。
　
ローラはカインに何か言われて、出かけていった。確かめに行く必要がありそうだ。

「少し、出かけてくる」

「え？　ちょっと…」

　イブが呼び止めるのも聞かず、ノアルは怖い表情をしたまま店を出て行った。
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