春待つ花のように
 外に出ると、空が明るくなり始めていた。

 本来なら、レイの別荘に行く準備をしなくてはいけない。でも今はそれどころではない。彼女が、自分たちの復讐に使われてしまうかもしれない。

 ロマに復讐しようと思っているカインたち。自分を復讐に目覚めさせるためには、手段を選ばないだろう。

 そのために使えるものは何でも使うつもりなのだろう。

 ノアルは早歩きで南へと向かっていく。噴水が見えてくれば、彼らがいる薬屋まですぐだ。

 怖い顔で店の前に立つと、ノアルは何の躊躇もせずにドアを開ける。

「おはようございます、ノアル様」

 店の真ん中に椅子を置き、カインが座っていた。ここで一晩、ノアルが来るのを待っていたのだろうか。

 ノアルは、ドアを静かに閉めると彼の顔を真っ直ぐに見つめた。

「アンジェラから聞きました」

 カインが笑顔で言う。その笑顔に何が隠されているのだろう。

 彼のペースに巻き込まれてはいけない。ノアルは一回、彼から目を逸らすと階段を見た。
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