春待つ花のように
 カインは玄関で靴を脱ぐと、裸足で部屋に入っていく。すぐにローラの姿を探す。

 彼女はキッチンを掃除していた。部屋にいてくれた。そう思うと安心して肩の力を抜いた。

『ノアル様はレイの女とデキています。かなり本気のようです』

 またため息をつくカイン。

『彼は…私に惚れてない』

 先日、ローラが悲しげな表情で話していたことを思い出す。彼女は、ノアルに他の女性がいることを知っているのだろうか。

「何かあったんですか?」

 気がつくとローラはカインの前に立っていた。彼は咄嗟に笑顔で彼女の顔を見たが、すぐに無表情になってしまった。

「ノアルからいい返事がもらえなかった?」

「いえ」

「仲間に何か言われた?」

「いえ…あっ…そういうわけではないですけど」

 カインの曖昧な受け答えにローラは難しい顔をしている。

 もしかしたら、自分のことで何か言われたのだろうか。それで、彼は言いにくそうにしているのだろう。

 そう思ったローラはパッと笑顔になると、カインに背を向けた。
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