揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
50m走にしたら、俺は雅志より1秒半ぐらい早くて。

人の多い公園内を走り続ける雅志を捕まえるのは、俺にしたら容易いことだった。


「待てって、雅志っ」


そしてアイツの肩に手を掛けると。

もう逃げられないと察したのか、雅志は2・3歩進んだ所で足を止めた。


「話、させてくれないか?」


背中を向けたままの雅志に、そう問いかけてみる。

しばらく動かなかったけれど、雅志はゆっくりと俺の方へと身体を向き直してきて。


真っ直ぐに、その双眸が俺を捕えてきた。


「話は水沢から聞いたよ」


ぼそっと雅志が口を開き、その言葉に…俺の鼓動が少し早くなり始める。


「階段から落ちそうになった篠原さんを庇って、お前も落ちたんだってな」


雅志の視線は、俺の左手の包帯へと向けられている。


「まぁ、大した事ないよ。医者は大げさだからさ」


包帯をなぞるように撫でると、俺は笑顔を作って見せた。

雅志に…罪の意識を感じて欲しくないから。


「俺が…お前に頼んだから。篠原さんに気持ち伝えてくれって。それでケガした事は、ホントに悪いって思ってる。だけどさ、どうしても納得いかないんだよっ」


そう語るアイツの眼差しは、さっきよりもずっと真摯で。

真実を告げるべきか迷っていた俺の心に、深く突き刺さってくる。


でも、梨香に話を聞いたんだとしたら。

彼女が記憶を失くしてしまったって事も、雅志は知ってるんだよな……?
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