愛かわらずな毎日が。

緊張感よりケーキ?


とりあえず、その前後の会話とか、流れみたいなものを教えてくれよ。

そうじゃなきゃ、まったく意味がわからないだろう。


「緊張感?ケーキ?」


うーん、と唸る俺の横で、福元がフッと息を漏らしたことに気づき、難しい顔をしたままで右を向いた。


目を細め、口角を上げた福元の横顔。


「なぁ、福元」


「うん?」


その顔は、なんだかとても。


「エロいな」


「………は?」


俺の言葉で怪訝な表情をした福元が、なにか言おうとしたのか口を開きかけた。

だから俺は、福元が言葉を吐き出す前に言ったんだ。


「なに思い出してニヤついてるんだよ」


すると福元は一瞬だけ目を見開くと、軽く握りしめた右手を口の前に置いた。


「…………コホッ」


「クククッ。ヤバいな、おまえ」


その顔、レアすぎる。

照れてんじゃないよ。


「……うるさい」

福元はボソッとそう言うと、残っていたビールを一気に飲み干した。


嬉しいというか。

まぁ、嬉しいんだろうな。

福元が、ちゃんと前に進んでることを知って。


ホッとしたよ。


福元にあんな表情をさせた子が、どうか福元の大事な存在になるように、と。

そう願わずにはいられない。

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