愛かわらずな毎日が。

ふたつ下のみつひろとは、いわゆるナンパというやつがきっかけで付き合うことになった。


季節は春。

短大を卒業後、なんとか入社することができた会社で三度目の春を迎えた私。

「今年もたいしたことなかったよね」

入社式後のランチタイムには必ず取り上げられる話題。

在籍する男性社員にも胸をときめかせることなく、新入社員の男の子たちにも裏切られ、また一年先の春に期待するしかできなかったあの頃。


みつひろに出会った。



「おねーさんっ。そんなに急いでどこ行くの?」

上司が忘れていった書類を取引先の会社まで届けに行く途中、そう声を掛けられた。

会社の、お世辞にも可愛いとは言えない制服を着た私に、にっこりと微笑みかけるひとりの男。


……なに、この子。


「軽薄そうな」という言葉がしっくりくるような子だった。

私が今まで関わりを持つことを避けてきた、そんな部類の子。

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