愛かわらずな毎日が。

ヒョイと覗いた給湯室。

隅の方で何やらコソコソしている、間宮さんらしき後ろ姿を発見。


「ここにいたんだ」


「ングッ、……」


「んぐ?」


「………なん、でしょ、…か?」


「あはは。隠れてなに食べてるの?」


「…………え、」


背を向けていた間宮さんがゆっくりとこっちを向いた。


彼女が手にしていたのは。


「……板チョコて」


まじか。

会社で板チョコ食べてる子なんて、初めて見ましたけども。


「数字、いっぱい並んでるの見てたら、……甘いもの食べたくなっちゃって」

手で口元を覆った間宮さんが、ははは、と笑う。

つられて俺も、ははは、と笑った。


「だからって、板チョコ?」

「はい。冷蔵庫で冷やして食べたとき、なんていうか。食べたときの食感っていうか。
板チョコの薄さがちょうどよかったから」

「………へぇ。なんか意外だなぁ」

「意外…?」

「間宮さんて、甘いもの食べないイメージしてたからさ」

「え?そうなんですか?私、めちゃくちゃ好きですよ。……あ。佐伯さんも食べます?」

間宮さんはそう言うと、給湯室の隅に置かれた小さな冷蔵庫から個包装されたチョコレートを取り出した。

左手に板チョコを持ったままで。


「ククッ。ごめん。俺、甘いもの食べないんだ」

「えーっ、意外ー」

「え?そう?」

「はい。女の子とケーキ食べてるイメージ、強いです」

「ははは。ひどいなぁ」

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