愛かわらずな毎日が。
「可能性はゼロじゃない、ってことよね」
香織がそう言うと、ぱちりと音でも聞こえてきそうな瞬きをした森下が口元を手で覆って叫ぶ。
「きゃーーーっ」
「ば…っ、ばかっ。大きな声出さないでよ」
想像以上に響いた森下の声に慌てた香織は、人さし指を立て、それを自分の唇に押し当てた。
「だって!だって、だって……っ」
森下は口元を手で覆ったまま、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「森下も、そう思う?」
香織は持っていた包丁を置くと、体ごと森下の方を向いた。
「はいっ。まちがいないと思います!
だって。間宮さんにしかできない仕事なんて、ありませんよね?
私や、香織さんに頼むことだってできたのに。
わざわざ間宮さんに頼むなんて、」
「……その発言、問題アリな気もするけど」
「とにかく!福元部長が間宮さんを好きになる可能性は、ゼロじゃない。……っていうか!
ゼロじゃないと信じたいです!!……ハッ。
もしかしたら、すでにはじまってるとかっ!?
福元部長の中にも、芽生えちゃってる?」
ドキドキと動きを速めた心臓を落ち着かせようと、右手を胸元に置いて深呼吸をした森下。
そんな彼女を見て、香織はフッと口元を緩めた。
「勝手な想像でしかないし。幼稚な考えかもしれないけど。
でもまぁ、そうだったらいいのにな、…って。
ふふっ。期待しちゃうよね」
「はいっ。そりゃもう、かなり期待しちゃってます!」
「あはは」