愛かわらずな毎日が。

『今、戻ったよ。営業部の部屋まで来られる?』

そんな電話があってから、私の心臓は落ち着きをなくしてしまった。

何度も深呼吸して酸素を送り込んでいるはずなのに、息苦しさは一向になくならない。


「覚悟」なんて言葉を使うのは大袈裟かもしれないけれど。

それでも。

その二文字を使わなければ、微かに震える手で目の前の扉を開けることができなかった。



「ごめん。なかなか連絡できなくて。もう少しだけ待っててもらえると助かる」

扉の開く音に気づいた福元さんはチラリと私の姿を確認しただけで、すぐにまた机の上にたまっていたメモ用紙に視線を落としてしまった。


「…………は、い」


のどの奥がヒリヒリと熱い。

胸の奥が、きゅうっと締めつけられるように痛むのは、怒りからくるものだろうか。

悲しみからくるものだろうか。


それとも、もっと別の。


「………………っ、」


悪いと思ってるなら、ちゃんと目を見て謝ってほしい。

ぎゅっと抱きしめて、頭を撫でてほしい。


ねぇ、福元さん。


お見合い、………するの?


「…………………、」


どうやらチョコレート菓子を詰め込み過ぎたみたいだ。

不安な気持ちと一緒に、のどにまで栓をしてしまった。


言いたいことがひとつも言えない。

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