愛かわらずな毎日が。
福元さんと付き合うことになった日。
『私と別れたくなったときは、……ケーキを丸ごと一個、用意してくれませんか』
福元さんに抱きしめられながら、そんなくだらないお願いをした。
『ケーキ?……丸ごと?』
『……はい』
『なんで?』
不思議そうに訊ねる福元さんから体を離した私は、人さし指で空中に四角形を描いてみせた。
『前に一度、このくらい大きな、ファミリーサイズのアイスを食べたことがあるんです。お皿になんか移さずに、容器から直接』
『……へぇ。それはすごい、ね』
『あ。全部じゃないですよっ。途中で母親に止められたし。さすがに……無理、です』
恥ずかしさから、目を丸くした福元さんの視線から逃れるように、再び福元さんの胸に頬をくっつけた私は、薄っぺらいシャツを挟んで伝わってくる体温にドキドキしながらも、ある夏の日の出来事を話しはじめた。
『テレビを視ていたら、偶然、映ったんです。
……私の知らない女の子の肩を抱いて、……ニコニコ笑ってる、自分の彼氏……が。
頭の中がぐちゃぐちゃになって。何か口にしないと、発狂しちゃいそうで。……黙々と、食べてました』
福元さんは、私が言葉を詰まらせるたび、背中を優しくさすってくれた。
『食べてる間は、泣かずに済んだから。
だから、今度は、……』
その後に続く言葉を、私の代わりに口にした福元さん。
『ケーキ、丸ごと?』
『……はい』