愛かわらずな毎日が。
「そっ…、そんなこと……っ」
可能な限り上体を反らし、くっついていたおでこを離した私の目に映ったのは。
「愛想、尽かされたのかと思った」
どこか悲しげな表情の福元さん。
でもその表情を目にしたのは、ほんの一瞬で。
すぐに、いつものように目を細めて私を見下ろす。
きゅうっと締めつけられる心臓。
福元さんの優しい表情がぼんやりと滲む。
「……愛想尽かすとか、そんなの、ぜんぜん。
まったく、ない」
ブンブンと首を横に振ると、福元さんが、あはは、と笑った。
「最近、一緒に過ごす時間がなかったからね」
上体を反らしたままの私の体を支えてくれていた福元さんが、よいしょ、と、私を抱き寄せる。
「怒ってるだろうな、とか。いろいろ。
今日は特に。表情も暗かったし、何か言いかけて止めたりするから。
話があります、なんて内容のメールを見たときは、もう、……」
右耳が、福元さんの胸元にぴったりとくっついてるせいだ。
福元さんの鼓動が。声が。
頭の奥に、ダイレクトに伝わってくる。
「正直に言うと、ケーキを買ってきたのは、機嫌をとるためで。
……まぁ、ケーキで機嫌をとろうなんて、情けない気もするんだけど。
俺は、別れたいだなんて、そんなことは少しも思ってないよ。
勘違いさせて、ごめん」
福元さんがそう言って私の髪を優しく撫でてくれるから。
何度も謝ってくれるから。
「……うっ、……ぐすっ、……わっ、私も、……ごめっ、ごめ…なさい……っ」
私も、顔をぐちゃぐちゃにして謝った。