愛かわらずな毎日が。
「……あ。福元です。いつもお世話になっております。すみません。連絡が遅くなってしまって。………いえ、こちらこそ」
静かな部屋に響く、福元さんの声。
電話の相手の声が聞き取れないからこそ、福元さんの言葉に集中する。
いつ「見合い」という単語が出てくるのか。
膝に置いた手に自然と力が入る。
「……えぇ。……はい……はい、そうですね。
では、そのように手配します。詳細はまた後日、ということで。……………はい、………」
ドクン、ドクン、ドクン、
「それはもちろん。できる限りのことは、………ははっ…、そうですね。えぇ、わかります」
ドクン、ドクン、ドクン、
「新しく資料をお持ちしたほうが、…………。
いいえ、構いませんよ。ご都合の良い日をご連絡いただければ、合わせますので」
ドクン、ドクン、ドクン、
「あぁ、それと。見合いの話ですけど、」
ドクンッー…、
心臓が跳びはねる。
ゴクリとのどが鳴る。
ゆっくりと視線を上へと移動させると、福元さんと目が合った。
いつものように、やわらかな表情。
心配いらないよと言ってくれてるような、そんな表情だった。
……そっか。
そうだよね。
今は、福元さんを信じる。
それだけだ。
ガチガチに固まっていた体から少しだけ力を抜いて、深呼吸を繰り返した。
福元さんの、どんな言葉も聞き漏らすことのないように。