愛かわらずな毎日が。
福元さんは机に置いたメモ用紙を人さし指でトントンと叩きながら、ふぅっと小さく息を吐き出した。
そして、
「遠慮しておきます、と言ったはずです。
それなのに、わざわざ伝言なんて残すから。
誤解されたじゃないですか」
そう言うと、私を見てクイッと眉を上げた。
「………え。……誤解?」
唇がそう動いただけで、声にはならなかったけれど、福元さんはそれに応えるかのように、今度は口角を上げた。
遠慮しておきます、……って。
お見合いはしない、ってこと?
「僕以外の人にも同じような伝言を残してるみたいですね。杉崎さんが困ってましたよ」
………なに、それ。
……どういうこと?
福元さんと鈴木のオジサンとの電話はしばらく続いたのだけれど。
当然のことながら、その後の内容なんか頭に入ってこなかった。
「では、また。失礼します」
受話器を置いた福元さんが机に軽くもたれて私を見下ろす。
「そういうことなんだけど。わかってもらえたかな」
腕組みをして首を傾げるその姿を見て、胸がズキズキと痛んだ。
「お見合い、しないってこと……?」
「うん」
「私の、勘違い?………早とちり、とか。そんな感じの、」
「まぁ、そんなとこかな」
「……………」
『確かめもしないで悩んでるなんて、バカみたい』
香織のその言葉が今ごろになって効いてきた。
頭がクラクラするほどに。