愛かわらずな毎日が。

「鈴木さんにしてみれば、挨拶代わりみたいなものだよ。出入りしてる業者の人間に、『うちの娘と見合いしないか?』って、片っ端から声を掛けてるんだ」


「……あ…いさ、つ……代わり?」


「そう」


「……………」


「あはは」


福元さんは組んでいた腕を解くと、開いてる、と言って私の顎を人さし指でちょんとつついた。

どうやら口を開けたまま福元さんのことを見上げていたらしい。


「………ふ、ぁっ」

慌てて両手で口を押さえると、福元さんはフッと目を細めた。

そして、私の頭に手を置くと、ゆっくりとした口調で話しはじめた。


「娘さんがね、彼氏を連れてきたんだって」


「………彼氏、」


「そう。それで、その彼氏っていうのが……、なんて言えばいいのかな。……少々ワケあり、とでも言うのかな」


「ワケあり、……ですか?」


私が腰掛けている椅子をクルリと回転させた福元さん。

驚いて目を見開いた私と向き合うと、私と目線を合わせるようにして片膝をついた。


「鈴木さんは、その彼との交際をあまりよく思ってなくてさ。娘さんに、『他を探せ。なんなら俺が連れてきてやる』って」


「………あ。それで、お見合い?」


「うん。娘さんのことが好き過ぎて、冷静でいられないみたい」


「………なんか、ほんとに、……あの。
………ごめんなさい」


福元さんの、ちょっとだけ私を見上げるその角度で、私の心臓がドキドキとズキズキを繰り返す。

すぐそばにある福元さんの頬に触れたいほどの愛おしさと、福元さんのことを信じなかった罪悪感とが入り混じる。

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