愛かわらずな毎日が。

「……えぇ。そうですね。……はい」

福元さんは一枚のメモを手に電話をしていた。


「資料をお持ちして、………はい。
来週にでも、一度そちらにお伺いできればと思うのですが」


だからって。

すぐそばに立っている私の方を、チラリとも見ないなんて。


仕方なくマグカップを机に置くと、福元さんはメモを持つ手を軽く挙げてそれに応えてくれた。


でも。やっぱり。

こっちを見てくれない。


「……………」


のどの奥がじわじわと熱くなっていく。

私はトレーを抱えて会釈をすると、泣き出しそうになるのを必死に堪えて給湯室へと戻った。


胸の奥が握りつぶされたみたいに痛い。


モヤモヤした気持ちを吐き出せない代わりに、微かに残るほろ苦いコーヒーの香りを思いっきり吸い込むように鼻を鳴らした。


ダメだ。

ここには居られない。

というか、居たくない。


「なんですか、これ。戻りが遅かったくせに白紙状態って。あり得ませんよ。もーっ。ほんと、何してたんですか!」

頬を膨らませ、グチグチと文句を言う森下の顔が浮かんだけれど。


しょうがないじゃない。

このまま同じ空間で仕事をするほど、私はデキた人間じゃない。


ロッカーの上に放置していたクリップボードを手に取ると、そのまま逃げるようにして営業部の部屋を出た。


福元さんは受話器を置いたって、私の名前を呼ぶことはなくて。

「コーヒー、ありがとう」

そう言ってくれたなら、何かが違っていたかもしれないのに。


………福元さんの、ばか。

< 220 / 320 >

この作品をシェア

pagetop