愛かわらずな毎日が。

「はぁぁぁ…」

大きなため息を吐きながら階段を一段、また一段と下りていく。


「どうしようかな、これ」

手にしていたクリップボードに視線を落とす。

眺めてみたところで、備品在庫管理表の営業部の欄が埋まることはない。


「戻りたくないなぁ」

森下にあれこれ言われるのも訊かれるのも面倒だし。


「はぁぁぁ…」


「おー、間宮。どした?ブッサイクな顔して」


「………あ、」


下からやってきた井沢がビジネスバッグ片手に私を見上げている。


こんなときに限って面倒くさいやつに会っちゃうんだよね。


「なんだよ。お疲れ様、くらい言えよ。
外回り頑張ってきたんだからさぁ」

井沢はそう言いながらわざとらしく肩をトントンと拳で叩く。


「………おつかれ」

ため息まじりにそう言うと、井沢はいつものように、

「かんじ悪いな」

と言いながら階段を上ってくる。

井沢との会話を極力避けたかった私は、黙ってこの場をやり過ごすことにした。


カツカツカツ。

コツコツコツ。


階段を下りる足音と上る足音。

それに被せるようにして井沢が言葉を発した。


「福元部長、居た?」

「えっ?」


福元さんの名前を耳にしただけで心臓が反応してしまう。

思わず持っていたクリップボードを抱え込んだ。


「営業部の部屋に。福元部長、居た?」

階段を上りきった井沢が、今度は私を見下ろしている。


「……居た、けど」


「そっか。さんきゅ」

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