愛かわらずな毎日が。
「へぇ。間宮さん、結婚するの?」
上から降ってきたその声に。
私の体は金縛りにあったみたいに硬直してしまった。
「あ、福元部長。お疲れ様です。
聞いてくださいよ。あいつ、男と」
井沢は私を指さすと、隣にやってきた福元さんに上戸くんから聞いたという話をしはじめた。
「たまたまあいつと同じ店に居たって、上戸が教えてくれたんですけど」
……なんなの、これ。
ううん。
なんなの、今日は。
「手なんか握っちゃって。『幸せ』とか言っちゃって。話してる内容ははっきりと聞こえなかったらしいですけど。男が頭下げて、結婚がどうとかって」
バカみたいにベラベラ喋らないでよ。
そんなんじゃないんだってば。
「どう見てもプロポーズされた、って感じの、」
違う。
『へぇ。間宮さん、結婚するの?』
違うってば。
「ち、がう……っ!!ちがいます!!」
ばか。
ばかじゃないの。
「あの人は…っ、……彼は、友だちです!
友だちに、なりました。ちゃんと、友だちに、」
自分でも、なにを言ってるのだろうと思ったけれど。
そりゃ、指は触れられたけど。
「幸せ」だと言ったけど。
でも。
「彼は、わざわざ結婚の、……報告をしに、会いに来てくれただけですっ」
きゅっと唇を噛んで睨みつける。
井沢を。
福元さんのことを。
「私じゃ、ない……。私は、結婚なんて、」
悲しいのだろうか。
悔しいのだろうか。
ぽろぽろと、涙がこぼれ落ちる。
この涙のわけを、ふたりにどう受け取られても構わない。
むしろ、こっちが教えてもらいたいくらいだ。
なんで泣くの。
いい大人が、なんで泣いてるの。