愛かわらずな毎日が。

みつひろの車に乗り込む。

助手席は私の指定席だったはずなのに。

わずかに倒されていたシートが、ここがもう、あの女の指定席になってしまったことを示していた。


いつからだろう。

みつひろの心の中に、私以外の人間が存在していたのは。


気づかなかった。

気づけなかった。



「それにしても、凄い頭だね」

ハンドルを握るみつひろが、チラリとこちらを見てそう言った。

「あ…。焦ってたの!急いでて。……必死、だったから」


ずっと輪ゴムでまとめていた前髪は、あり得ないくらいマヌケなクセのつきようだった。

私はそれを手で撫でつけながら窓の外に視線を移した。


「私、自分がこれほどマヌケな人間だと思わなかった」


最後になるかもしれないと思っていながら、ボサボサの髪で色気のない部屋着を着て、化粧もしないまま。

だらしない姿のままみつひろに会いに来てしまった。


「そこがいいんだよ」

真っ暗闇の中、次々と後ろに流れていく景色を眺めながら、みつひろの言葉を聞いていた。


「だったらどうして他の女を好きになったりしたの?」


思わず口に出しそうになった言葉をのみこむ。

< 29 / 320 >

この作品をシェア

pagetop