愛かわらずな毎日が。
玲香さんと向かい合って座る。
そんな状況をつくり出したのは自分なのに。
なんだか信じられなくて。
どこか他人事のように思えて。
紅茶に口をつけた玲香さんのことをぼんやりと眺めていた。
栗色の髪。
唇のピンク。
爪のベージュ。
目のきわに引いた黒のライン。
ぼんやりと。でも。
視線は、きれいな色を行ったり来たり。
「………あの、」
しばらくして、玲香さんがカップを置いて姿勢を正した。
「あ…。はい…っ、」
コクリとのどを鳴らした私も、玲香さんと同じように手を膝の上に置いた。
そのすぐあとで。
玲香さんが頭を下げて、
「……ごめんなさい」
そう謝る。
ドキン、と心臓が跳ねた。
「………ぁ、」
私、前にも似たような景色を見た。
確か。
このカフェで。
この席で。
あぁ、そうだ。みつひろだ。
あのときは、ちょっとややこしいことになって。
「あ、あの…っ。もう、大丈夫です。さっきも謝っていただいたし…っ、」
思わずキョロキョロと辺りを見回した。
会社の人とか、知り合いとか。
この状況を見られたら、何を言われるかわからない。