愛かわらずな毎日が。


学生の頃に思い描いていた、そんな大人とは程遠い。


余裕がない。

我慢もできない。

恋愛偏差値だって低い。


これが自分なのだ、と。

今日、改めて思い知らされた。



「玲香さんが、会社に来たの。
福元さんじゃなくて、私に……会いに」

ひとしきり泣いたあと、のそのそと体を起こした私は、チクチクと針の刺さるような胸の痛みに耐えながら話しはじめた。


「福元さんに会いに来たこと……、ごめんなさいって、謝ってくれて。」


「外は寒かったから。……お茶でも、って誘ったの。それで、」


「玲香さんと自分を比べて。……なんだか、……泣きそうになって」


「きっと、後悔するんだろうな、って……。
そう思ったけど、」


上手く話せているか自信はない。

でも、福元さんは耳を傾けてくれている。


福元さんの、私を見つめる目がとても優しくて、涙がまた溢れ出す。


「玲香さんに……、訊いたの。
今でも、まだ、福元さんのことが……好きなのか、……って。」


大丈夫だよ、って。福元さんはそう言ってくれたのに、これじゃあ、福元さんのことを信用していないみたいで。

何より。

玲香さんの大切にしてきた思い出を汚してしまった。


玲香さんの思い出を引っ張り出して、私の真っ黒な感情で汚してしまった。


「………ごめんなさい」

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