愛かわらずな毎日が。
「……さて、と」
私の首に巻かれたままのストールが、福元さんの手によって外される。
うっすらと汗をかいた首に空気が触れると、自然と息が漏れた。
福元さんのことだから、きっと玲香さんにフォローを入れてくれるに違いない。
直接なのか。それとも他の人に頼むのかはわからないけれど。
どちらにせよ、私が傷つくようなことはせずに、上手に。
「おなか空いてない?何か作るよ」
私の瞼を親指でそっと撫でた福元さんは、こんな目じゃ外には出られないからね、と付け足すと、いたずらっぽく笑った。
腫れあがっているであろう瞼をゴシゴシと乱暴に擦った私は、
「……パスタ。…パスタが食べたい、です」
そう言って鼻をすすった。
「あはは。了解」
立ち上がった福元さんがキッチンへと向かう。
私の座る位置からは、冷蔵庫の前に立つ福元さんの姿を見ることができない。
目を閉じた私は、濡れた睫毛を指で拭いながら、冷蔵庫の中を確認する福元さんの姿を想像する。
こんなにも甘やかされているというのに、どうして不安になる必要があっただろう。
冷静になればなるほど、福元さんに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる。