愛かわらずな毎日が。


「福元さん……っ、」


「うん?」


「そこで。……そのままで聞いてて」


鍋に水の落ちる音が止むと、福元さんの、うんという返事が聞こえた。


私は目を閉じたまま。


かっこいい言葉じゃなくて。

それはもう、ありきたりな言葉なんだけど。


福元さんの、心の奥底に響けと願う。



「いつも。……ほんとに、いつも。
こんな、……なんの取り柄もない私と、一緒にいてくれて。大事にしてくれて。
ありがとう、ってたくさん言っても、言い足りないくらいで。
そういうの、どうやったら伝わるかな、…って。
いつも考えてるんだけど。
考えたところで、大したことも思い浮かばなくて。
だから……。だけど。

福元さんに愛想つかされる前に、なんとか。
ちょっとずつだけど、ね。
この気持ちを、ちゃんと。ぜんぶ伝えていけるようにするから。……だから。

これからも一緒にいてくれたら、すごく、
すごく嬉しい、……です。」



不器用な私の想い。


届け。


響け。


そして、受けとめてくれたら。


いつものように優しい表情で「ありがとう」って言ってくれたら。

それだけで幸せ。


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