愛かわらずな毎日が。
しまった、と思った。
大人の女性らしからぬ発言だった、と思った。
でも、言ってしまったのだから仕方ない。
私は開き直り、唇をとがらせて見せた。
隣でチラリと腕時計に視線を落とした福元さんが眉尻を下げて言う。
「それは申し訳ないことしちゃったね。お詫びにご馳走するよ、と言いたいところだけど。すぐに次の約束があってさ」
「そっ…、そんなつもりで言ったんじゃないですよ!ごめっ…、あ。すみませんっ」
福元さんは慌てふためく私を見てクスクス笑うと、手を挙げて一台のタクシーを停めた。
「足痛そうだから、帰りはタクシー使っていいよ。今日はありがとう」
「えっ、あ……、はい……」
タクシーに乗り込んだ私に、福元さんは、
「お疲れ様」
と、目を細めてそう言った。
「あ……。お疲れ様、でした」
ドアの閉まる音に消されてしまいそうなほど小さな声でそう言って会釈をした。
そんな私に福元さんは、やっぱり笑顔を見せる。
「お客さん、どちらまで?」
「あ。ここからすぐで申し訳ないんですけど」
ルームミラー越しに運転手に行き先を告げ、福元さんの姿を探した。
福元さんはちょうど地下鉄の階段を降りていくところで、その姿はあっという間に見えなくなってしまった。