愛かわらずな毎日が。

6月1日。

今日から福元さんが本社勤務になる。


数年前、福元さんが本社から営業所に異動になったときとはまったく違う。

あのときは、福元さんの異動についてそこまで深く考えることはなかったのだけれど。


心構え、とでも言うのだろうか。

私があれこれ心配することではないとわかってるのに。

今日という日を迎えるまで、なんだか自分のことのようにそわそわと落ち着かない日々を過ごしてきた。



「おはよう。新しい名刺はできてる?」

タイムカードを押し、更衣室に向かう途中で福元さんに声をかけられた。


相変わらず、さわやかな笑顔。

……じゃなくて!


「おっ、おはようございます…っ。
あの、ごめっ……。す…、すみませんっ。すぐに持ってきますっ」

私服のまま慌てて福元さんの名刺を取りに行こうとした。

「あっ、いいよ、今じゃなくて」

「………え、」

「あとで営業の部屋まで持ってきてくれる?」

「あ、……はい」

「よろしく」

「……は、い」


発注先の手違いがあり、新しい名刺が届けられたのが昨日の昼過ぎ。

福元さんは既に営業所へ向かってしまっていて不在だったのだ。

いつもの私なら、

「ごめんなさい。届いたときには福元さんがいらっしゃらなかったので渡せませんでした」

とか。

いいわけのひとつやふたつ言えたはずなのに。

福元さんの前だとうまく言葉が出てこない。


なんだか、おかしい。

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