愛かわらずな毎日が。
「今回だけですよ。主任にはナイショにしててくださいね」
「うん。わかってる」
ふたりとの距離が縮まるにつれ、聞こえてきた会話。
人さし指を唇にあて、肩を竦めて笑う彼女は、経理部の小西さん。
私とは正反対の、ふわふわとした雰囲気の女の子だ。
「夕方までには用意できると思います」
小西さんの、どこか甘ったるく響いたその声を、
「ごめんね」
と、福元さんのやわらかな声が包み込む。
グッと、心臓が握り潰されたように痛んだ。
きっと、仕事の話。
だって。伝票がどうとか、って聞こえたし。
でも。
頭では理解できてるはずなのに。
胸が、キシキシと音を立てる。
大丈夫。
ふたりは、仕事の話をしているの。
だから、大丈夫。
ドクドクと激しく動く心臓に言い聞かせていた。
何度も、何度も。
「ほんとに。ナイショですよ」
「あはは。大丈夫だよ」
僅かに乱れた呼吸をどうすることもできないまま、ふたりの横を通り過ぎる。
知らんぷりもできないから、会釈だけして。
小西さんは、福元さんから渡された伝票に視線を置いたままで、そのことに気づいてはくれなかった。
福元さんは。
気づいてくれただろうか。
私の会釈に。
私のことに。