愛かわらずな毎日が。

柴田部長が使用していた机の上にダンボール箱を置き、荷物を詰めこむ。


空っぽのクリアファイル。

目玉クリップ、使いかけのメモ用紙。


会社の備品か、それとも柴田部長の私物か。

仕分けなんてあとからでいい。

早くここから立ち去りたくて、手に取るものを次から次からへとダンボール箱に放り込んでいく。

それなのに。


『お先にどうぞ』

勝手に再生される福元さんの声。


動かしていた手が止まる。


すぐそばで響いた、ちょっぴり低い声が何度も繰り返されて。

胸が、きゅうっと締めつけられる。


あのときドアを開けてくれたのは、ダンボール箱を抱えて両手の塞がっていた私を気遣ってのことだったと、今頃になって気づいて。

きちんとお礼も言わず、軽く頭を下げただけで終わらせてしまったことが悔やまれる。


気分、悪くしたかな。

なんだこいつ、って思ったかな。

それとも。

気にしてないよ、って笑うのかな。


福元さんは優しいから。

誰に対しても、優しいから。


…………小西さんにも。


そういえば、小西さん


ふわふわと笑ってた。

甘えるような声で喋ってた。


『ほんとに。ナイショですよ』

『あはは。大丈夫だよ』

仕事の話とはいえ、秘密を共有して。


あぁ、だめだ。

思い出したら、だめ。


小西さんは、好きだったりするのかな。

福元さんは、小西さんのこと。


だから、だめなんだってば。

考えちゃ、だめだ。


泣いてしまう。

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