愛かわらずな毎日が。
「バカみたい……」
福元さんの心の中には。
福元さんの隣には、特別な人が存在するかもしれない。
そんな大事なことから目を背けてきた。
現実を知ろうとしなかった。
知るのが怖かった。
小西さんが、福元さんのことを好きじゃないといい。
福元さんが、他の誰かのものじゃなければいい。
今まで散々、知ることから逃げてきたくせに、今頃になって焦ってる自分が情けない。
私以外の人に優しくしないで。
優しい目で見ないで。
優しく名前を呼ばないで。
そんなことを言える立場じゃないのに、次々に言葉が生まれてきてしまう。
だから、のどまで出かかった言葉を必死にのみ込む。
のみ込みつづけて、苦しくなる。
「バカみたい……っ」
ゴシゴシとふきんを洗う手に力が入る。
好きって気持ちに染みついた黒い感情も、こんなふうに洗い流せたらいいのに。
「あー。ここに居たんだ。
今から郵便局に行くけど、ついでに会議用のお茶も買ってこようか?残り少なかったよね。
……って。何してるの?手袋もはめないで。手、荒れるよ」
「…………」
「………愛?……どうしたの?」
「……かお、…り」
「……なに?」
「…………わた、し、」
「うん」
「……私、………福元さんのことが、」