愛かわらずな毎日が。
「あ、そうだ。愛が警戒してる小西さんのことだけど」
「えっ……?」
突然の香織の言葉に心臓がドクンと反応する。
ゴクリ、とのどが鳴る。
「小西さんが、……どうかした?」
「うん。塚田ちゃんから聞いたんだけどね。
あの子、彼氏いるよ」
香織があまりにもサラリと言うものだから、
「ひぇっ!?」
と、素っ頓狂な声を出してしまった。
「あははっ。なんて声出してるの」
「だって、香織が…っ。……ていうか、……ほんと、なの?」
フォークに巻きつけたパスタからトマトソースが落ちないように口に運ぶ香織が、クイッと眉を上げてウンウンと頷いた。
フォークを握る手に力が入る。
口の中のパスタをゴクンと飲み込んだ香織の言葉を一言一句聞き漏らすまいと、自然と体が前のめりになる。
「この前の飲み会のとき。ほら、愛が会社に携帯を忘れたときの」
「うん」
「あのとき、愛が会社に行ってる間にね、塚田ちゃんが言ってたの。『小西さんに超かわいい年下の彼ができたんだよー』って」
「………え、」
「塚田ちゃん情報だからね。確かだよ」
香織はそう言うと、口の端を指で拭った。
「……そう、なんだ」
シュルシュルと空気が抜けていくみたいに、全身から力が抜けていく。
握りしめていたフォークを皿に置き、腰掛けていた椅子の背もたれに体を預けた私は、じわりと熱くなる胸に手をあてて深く息を吸い込んだ。
「………はぁぁぁ。そっか。そうだったんだ」