愛かわらずな毎日が。
店を出たところで香織が手をあわせて謝る。
「ごめんね。ほんとは、もっと話を聞いてあげたかったんだけど」
香織の言葉に首を横に振った。
「ううん。じゅうぶんだよ。
こっちこそ、相談に乗ってもらった上にご馳走までしてもらっちゃって。ごめん。ありがと」
「ふふっ。急がせちゃったお詫び。
また、ゆっくり話そうね」
「うん。……あ、そうだ。凌くんに、また今度、一緒にごはん食べようね、って伝えておいて」
「うん。わかった。伝えておく」
じゃあね、と香織に手を振ると、駅を目指して歩き出す。
あれだけ愚痴をこぼしていた香織だったけど、帰り際、
「それでも嫌いになれないんだよね」
と、眉尻を下げて笑っていた。
「……いいなぁ」
ほぅっと、ため息にも近い息が漏れる。
正直、香織がうらやましかった。
どれだけ腹を立てても、一緒に居ることが当然だと思える人がいる。
それが、とてもうらやましかった。
「………なんだか寂しくなってきちゃった」
最近は、誰かの幸せそうな顔を見ると、胸がきゅっと締めつけられたように苦しくなる。
私も。
私だって。
そんな言葉が浮かんできて、胸が苦しくなる。