愛かわらずな毎日が。

どんどん膨らんでいく想いを伝えたいという気持ちはあるのに、一歩踏み出すことを躊躇ってしまう。


今はまだ怖い。


少しずつ私のことを知ってもらって。

少しずつ、私のことを心に焼きつけていって。


いつか。

いつか、私のことを。


なんて。


これを「慎重」と言うのか、「臆病」と言うのか。

それとも他に、もっとしっくりくるものがあるのかもしれない。


福元さんを想うかたちに名前をつけることができたなら。

取扱説明書とか、攻略本とか。

この恋にぴったりの攻略法を、探し出せるのにな、って。

そんなバカなことを考える。



「………何分の電車があったかな」

時間を確認しようと、バッグの中をガサゴソと漁る。


「………あれ?携帯が。……えっ、うそ。確か、さっき、……………あ。あった」


バッグの底にあった携帯を取り出す。


「…………」


携帯は、置き忘れていないし。

FAXが届いてるかどうかの確認も、頼まれていない。


それでも。

心が後ろへと引っ張られる。


このまま駅へ向かうか。

クルリとまわれ右をして、会社に向かうか。


ふたつにひとつ。

選ぶのは、私。


私がどうしたいか。

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