王子様のしつけかた☆
そんなことをしていて、自分が「星の王

子さま」を探していたことに気がついた。


よく見ると、一ノ瀬くんが「星の王子さ

ま」の本を枕のかわりにして寝ていた。


(!ちょっと…どうしよう)


起こそうかと思ったけれど、なんだか悪

い気がして、それはやめた。


彼が起きるまで、隣のいすで座って待つ

ことにした。


いすに座ると、小さな寝息をたてている

ことに気がついた。整った顔を、ちらりと見る。


(かわいいし、かっこいい。こんな近く

で見るの…初めてかも)


同じ部活なのに、全然話さないし、まじ

まじと見たこともなかった。


こんな近くにイケメンさんがいるなんて…。


あたしはなんだかドキドキしてきて、も

う一度観察しようと思い、覗き込んだ。






「何見てんの?」




ギョッとして、目を開いた。彼の整った

美顔が、あたしを覗き込んだ。


長い睫毛は、さっきよりも、もっと細

かく見えた。


顔が一気に赤くなる。


「え…、そそその、ご、ごめんなさ…」


一ノ瀬くんは、真顔で言った。


「あんた、俺のこと好きだろ?」


あたしはもっと目を見開いた。


「…へ?」


一ノ瀬くんは、にやっと笑った。


「なんか、そんな顔してる」


そう言うとあたしの肩より長い髪を手

ですくった。


すると、いきなり顔を近づけてきた。



あと少しでキスができるくらい。




彼は耳元でささやいた。




「あんたタイプ。4月から狙ってた」




吐息がくすぐったくて、肩をすくめた。


低くてやわらかい声が心地いいと思った。




あたしは何も言えないまま、

ただそこに座ってされるままにしていた。







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