スノードーム
「どした?こんなとこで」
ヨシくんは教室から出てドアの前に立つと、首を傾げながら私たちを見る。
ヨシくんが立つドアの向こう側に橋上先輩と野球部のマネージャー、それに先輩が見えたけど顔を逸らして気付かないフリ。
目の前のヨシくんだけを視界に入れた。
そんな私の小さな動きに気付いてくれたんだろう。
ヨシくんは僅かに体を動かして私の視界から先輩たちの姿を隠してくれた。
多分、先輩たちからも私の姿は見えていない。
「ケータイ、忘れてったよ」
心の中でありがとうと呟きながら"はい"とケータイを差し出せば、思い出したように頷いたヨシくん。
「朝から無ぇと思ってたらカンナの部屋に忘れてたのか」