スノードーム
その瞬間、背中の方から焦ったような声が聞こえてきた。
同時にぐいっと後ろに引っ張られる私の左腕。
引き上げられるように立ち上がれば、トスッと背中に触れた暖かい感触。
次の瞬間にはふわりと覚えのある匂いが鼻を掠めた。
私がそれを間違えることはない。
「お前、足、はやすぎ」
耳元で囁くように紡がれた擦れた声。
息を切らしながら話すのは間違いなくさっきその手を触れ払ったはずの先輩で。
その声にドクンと心臓が跳ねる。
頭がついていかない。
呆然としたまま視線を漂わせた後、やっと自分の体が先輩と密着しているのだと気付いた。