スノードーム
そんな私の動揺に気付いたらしい先輩はハッとしたようにその手の力を緩めてくれる。
けれど私はさっきまでのように逃げたそうと暴れることは出来なかった。
「……」
「……」
「……なん、で…追いかけてきたんです、か」
居心地の悪い沈黙。
視線すら合うことのないそれに堪えかねて、先に口を開いたのは私の方だった。
私の言葉に今度は先輩の体が小さく揺れる。
外れそうで外れない先輩の腕をじっと見つめながら何とか吐き出したのは、意地の固まりのような言葉。
何とも可愛くない。
なけなしの勇気を振り絞って吐き出したそれはとても小さな音だったけれど、静かすぎるこの空気の中には確かに響いて。