スノードーム




「何でって…綾人が、突然飛び出してったから…」




心配で、と視線をさ迷わせながら呟いた先輩に目の奥がグッと熱くなる。

今までだったら、嬉しく感じていたはずなのに。笑っていてはずなのに。


今込み上げてくるのは、怒りと虚しさだけ。




「そういうこと、しないでください!」




私はバカだから。

勘違いしてしまいそうになる。




「彼女いるくせに、優しくしないで…!」




可能性なんてこれっぽっちもないのに。


未練がましく、振り向いてくれるんじゃないかって期待してしまいたくなるから。


もう離してください、と小さく呟いて俯く。


先輩の前でなんとか我慢していた涙は、その努力も虚しく再びアスファルトに染みを作っていった。




< 173 / 200 >

この作品をシェア

pagetop