スノードーム
「何でって…綾人が、突然飛び出してったから…」
心配で、と視線をさ迷わせながら呟いた先輩に目の奥がグッと熱くなる。
今までだったら、嬉しく感じていたはずなのに。笑っていてはずなのに。
今込み上げてくるのは、怒りと虚しさだけ。
「そういうこと、しないでください!」
私はバカだから。
勘違いしてしまいそうになる。
「彼女いるくせに、優しくしないで…!」
可能性なんてこれっぽっちもないのに。
未練がましく、振り向いてくれるんじゃないかって期待してしまいたくなるから。
もう離してください、と小さく呟いて俯く。
先輩の前でなんとか我慢していた涙は、その努力も虚しく再びアスファルトに染みを作っていった。