雪人
キョロキョロと辺りに瞳を忙しなく動かして、魔物が居ないか確認をとると安堵の溜め息を吐く。もうこれで何度目かになる動作を済まし、自分を中心にして半径30m位の距離に展開されている、薄い透明な水色をした結界を茶色い髪をした男性は不思議そうに見ていた。
「あの女の子がこんな結界を展開できるなんて、すごいな……。……っと、それよりあの男は大丈夫なのかな?逃げた僕が言うのもなんだけど……」
誰に言うでもなく一人で呟いた。もちろん答える相手はいない。じめっとした空気で薄暗い森に一人で心細いのか、男はそわそわして落ち着きなく、また辺りをキョロキョロと瞳を動かしている。そして、何かを見つけたようで安堵の表情を滲ませた。
男の視線の先には透き通る程の白い肌に、空の色のように澄んだ綺麗な水色の髪をした小柄な女性が、こっちに歩いてきている光景だった。
「エレミールさん。魔物と遭遇しなかったのですか?」
男性は近づいてくる小柄な女性――エレミール――に問い掛けた。
エレミールは茶髪の男性へ近づき笑顔で頷く。それを見た茶髪の男性は心底安心したように肩の力を抜く。
「そういえば、どうして逃げる時、地面を濡らしてたんですか?」
「あれはね、私の技に関係してるのよ。でも、企業秘密ね」
「………」
エレミールの可愛らしい笑顔に茶髪の男性は思わず見惚れてしまう。男性が黙ってしまったのを見てエレミールは顔を近付ける。惚けていた男性はエレミールの顔が目の前にあるのに気が付き、急いで後ろへ離れる。その顔は真っ赤だった。不思議そうに離れた男性を見て、エレミールは今思い出したように男性へと訊ねる。
「今更なんだけど、名前聞いていい?」
「……ああ、そういえば言ってなかったですね。僕の名前はシモーズです」
「シモーズさんね。聞こうと思ってたことがあるんだけど、どうしてこんな気味が悪くて薄暗い森にいたの?」
茶髪の男性――シモーズ――はその質問に困惑したような表情で、エレミールから視線を離し宙を彷徨わせる。その態度に何かあるのは間違いないが、無理矢理言わせるのはしたくないとエレミールは思い、うまく言わせるいい案がないか考えた。
が、すぐにいい案なんか浮かぶわけでもなく、あきらめたような表情をした。