雪人
「なあ、エミル。あいついいのか?さっきから地面に座り込んで、何か書いてるけど……」

「あっ!ごめん。忘れてたわ、彼のこと」

 ルイに指摘されエレミールはポンと手を叩き、苦笑いを浮かべる。その様子にやれやれといった表情でエレミールを見るルイ。いまだ地面に何か書いているシモーズに二人は視線を向ける。見られているとは知らず、地面に膝を抱え座り、くよくよしながら何かを書いているシモーズ。その様子に二人の頬は引きつり、今度はルイ達の方が声を掛けずらくなる。いつまでもこうしているわけにもいなく、エレミールは話し掛けるためシモーズに近寄る。

「あ、あの……」

「………」

 エレミールの声にシモーズは少し反応する。顔をエレミールに向けた。頬が引きつったままエレミールは話し掛けた。

「その……ごめんなさい。あなたを無視するつもりなんてなかったの。ほら、あるじゃない、いったん火がつくと止まらない人。私も話し始めると止まらなくって」

 エレミールは頬を人差し指で掻きながら、照れくさそうな表情で宙を見る。それを見たシモーズはかぶりを振って立ち上がり、自分よりも背の低い少女のような可愛らしい仕草をする女性に向き直る。

「いや、いいんだよ。気にしないで。」

「本当に……?」

「うん」

 小さく頷いたシモーズを見て、ほっとしたようにエレミールは吐息をはく。

「それより、囲まれているのに気付かないのか?」
 ルイは鬱蒼と茂草木の辺りを一度見回し、視線を二人に向ける。二人はルイの言葉で今気付いて辺りを見回す。気配は五人。魔物ではない人の気配が自分達を囲っている。
「ルイ、どうするの?」

「どうもしないさ。ただ、あちらの出方次第によっては殺す」

 ルイの翡翠色の瞳が冷たさを帯、目を細くする。その目はまるで獲物を狙う狼のように残酷な色をしていた。エレミールの背筋に寒気がよだつ。シモーズも同じように背筋が凍り、息もしづらそうだ。
 ルイの雰囲気が相手に伝わったのか、緊迫したような空気が辺りを埋め尽くす。

「いつまでもそうしてないで来たらどうだ……レジスタンスのみなさん」

 ルイの言った意味ありげな言葉に緊迫した空気が緩んだ。そして、五人の驚愕した表情が雰囲気から伝わる。エレミールも驚いた表情でルイを見た。
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