雪人
 ラキアは疑わしそうな目をルイに向ける。はぁとため息を零し、信じてないラキアにルイは話そうとするが、それよりも早くシュレリアが頬を膨らまして前方を指差して言う。
 この精霊だか何だか知らないがそんなやつの言うことなんか信じていなかったラキアは振り返りまた歩きだそうとするが、立ち止まる。なぜなら五匹のウルフが肉眼で見えるぐらいまで迫ってきているからだ。
 レジスタンスのみんなもウルフの存在に気付き身構える。

「ルイ、どうするの?
助ける?」

「いや、その必要はない。あいつらだけでウルフの相手をしてもらう。お手並み拝見だな……」

「危ないと思ったら私、助けるからね」

 心配そうな表情でレジスタンスに視線を向け、隣にいるルイに言った。ルイはああ、と相槌を打って迫ってきたウルフに対峙しようとするレジスタンスを黙ってみた。

 レジスタンスの連中はいつウルフに襲い掛かられてもいいように、戦闘態勢に入っている。前方にいるウルフを見据えたまま、ラキアが後ろにいるメンバーへウルフを刺激しないよう静かに命令した。

「一人一体。敵のウルフを倒せ」

「了解」

 ラキアの後ろにいる四人は同時に返事をする。四人の後方にいるシモーズは複雑そうな表情で、それをみていた。
 ラキアを含めた五人がウルフへ駆けだす。同じようにウルフもレジスタンスに飛び掛かっていく。
 駆け出したレジスタンスが突然、四方八方に散る。その後を追うようにウルフも一人一人に散っていった。それを傍観していたルイとエレミールは、散っていき遠ざかっていく姿を見ていた。



 ―――――――――



 ルイ達が見えない場所で立ち止まり、ベスは腰に差していた剣をぎこちない動きで鞘から抜き放ち、舌を口からだらしなく出して鼻息の荒いウルフに切っ先を向ける。

「ふぅー……緊張する……」

 ベスはウルフをじっと見たまま深く呼吸し、緊張して固まっている筋肉をほぐす。
ベスの今までのぎこちない動きには理由があった。なぜなら、レジスタンスに入って間もないからであり、加えて、今これが初めて出会った魔物との戦いである。
 ベスは嫌な冷や汗が背中を伝うのを感じながら、じりじりと剣の間合いにウルフを入れようとゆっくり近寄っていった。
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