雪人
 呟いていたエレミールは、はっとして俯いていた顔を正面に戻しルイを探す。呑気そうに椅子にもたれかかって目を瞑っているルイを見つけたエレミールは素早くルイのもとに駆け寄り、膝に乗って鬼気迫る表情で顔を近付ける。膝に軽い衝撃を受け、ルイは少し間をおいて億劫そうに目を片方開く。そして、ルイにしては珍しく目を見開き驚いた声を上げる。

「……おわっ!な、どうしたんだよ……そんな恐そうな表情で……?」

 顔前にある鬼のようなエレミールの表情だが、小振りな可愛らしい顔であるためあまり恐くない。ただ、ルイは突然のため思わず狼狽してしまった。

「ルイ……情報上げるからご褒美頂戴」

「……え?的を得ないんだけど……」

「だからご褒美」

 ルイは思わず丁寧に返した。何かに取り付かれたように鼻をくっつけてくるエレミールにルイの頭の中は混乱し収拾がつかない。目と目が合い、視線を外せない。それよりもお互いの唇が数ミリで触れ合う距離に、全く身動きがとれない状況に頭を抱えたくなってくる。
 二人の会話はお互いの顔に息がかかり、はたからみると恋人のようだった。

「……まず冷静になれ。情報とご褒美ってどういうこと……だ?」

「そんなのは後……キスして」

「エミルまさか……!」
 エレミールの表情が鬼気迫る顔から女性のものにかわっていた。それに気付たルイは逃げようとするが両手で顔を固定され逃げ場が無い。
 見張りの二人は息を呑み、ルイ達の様子を見ていた。

「ルイごめんね……チャンスを逃したくないの。許し――!」

 エレミールがルイの唇に自分の唇を重ねようとした瞬間、それを邪魔するかのように怒声が響きラキアが入っていった石の扉が豪快な音をたて壊れた。壊れた扉からラキアが一直線にテーブルの上へと飛ばされたのだった。
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