雪人
「ルイさん、すいませんね。ラキアが覗いたばかりにリーダーがいつもキレてしまい困ってるんですよ。特に今回のは、殺すつもりのようでしたからね」
「苦労してるんだな、ミフレにもそいつにもな」
エレミールの魔の手から逃げ出せたルイは、どこかほっとしたような表情で、背後にいるダントに話し掛けた。
「いえ、それほど苦労でもないんです。まあ苦労というより慈善介護ですけどね」
「誰が介護じゃあぁぁ!――ん?お、ルイじゃん。いつ来たんだよ!」
ダントは笑顔で悪気なくサラっとひどい事を言う。反応した女性――ミフレ――は怒鳴り散らすように大声を上げるが、視界に入った懐かしい顔にころっと表情を一変させた。満面の笑みで懐かしい人へと急いで駆け寄り抱きつく。
「タオル一枚で抱きついてくるなよ。お前は本当成長しないやつだな、ミフレ」
「お前もだな、ルイ。今日は違う女の子連れてるんだな。四年前の時にいたブロンド髪のペッピンさんはいないのか?ん〜名前なんだっけかな……」
ミフレはルイから体を離し、俯いて考え込む。 ルイはミフレが話しているとき一瞬悲しい目をしたが、誰にも見られることはなかった。
「そのことはいいから……。そんなことより早く着替えてこいよ」
ルイに話し掛けられ、俯いていた顔をミフレは上げる。ルイと目が合い、その雰囲気に触れてはならないような気がしたので、これ以上この話をするのをミフレは止めることにした。
「ん、わかった。ルイ、覗くなよ!」
ミフレは茶目っ気たっぷりの笑顔を残して壊れた扉に入っていった。中が丸見えの状態で着替えるのかと思いきや、石のナイフや壊れて散らばった破片がひとりでにドアの前に集まり、全ての破片が合わさって石の扉を形作った。
ダントは修復し終えた扉を一瞥し、疲れたように溜め息を零す。
「ダント、お前に同情するよ。壊れるたびに直してるんだからな」
「はは、慈善介護も中々苦労するんですよね。でも、こんな日常も悪くないですよ。ルイさんも考えてみては?」
「少し……考えてみることにするよ」
ルイの考えてる仕草を見て、それじゃあと言い、ダントはラキアを背負って一つの扉に入って行った。