雪人
 暫らく着替えを待つと、黒の短パンに赤いキャミソールの上から黒いジャケットを着たミフレが扉から出てきて、ルイ達を見て口を開いた。

「遅くなってすまんな。さて、世間話か依頼内容どっちの話をしようか?」
「まず依頼内容からしてくれ」

「ったく、空気が読めない奴だな」

 ミフレは、はぁとわざとらしい溜め息を吐き仕事熱心そうなルイを見て、ふざけた表情から真面目なそれへと変わる。ルイ達のために石の椅子を瞬時に作り、座るよう促した。そしてルイ達の向かい側に自分にも椅子を作り、座ってから一度ゴホンと咳払いをして話しだす。

「依頼内容の話なんだが、首都――いや、今は王都だな。王都グライドアースにアタシと潜入してもらう。もちろん、前にも潜入してるからルートはちゃんとある。この点で質問あるか?」

 ミフレは向かい側で黙って聞いている二人に視線を送った。

ここで首都と王都との違いの補足をしておきたい。
首都は誰でも入れるように入り口が東西南北あるのに対して、王都は南だけという特徴の違いがある。首都と王都はどちらも王様が統治しているが異なる点が大きく分けて三つある。
第一点は規制の違い。大雑把に分けると前者が緩く、後者が厳しい。
第二点は騎士団があるかないか。前者は警備隊みたいなものがあるだけで騎士団ではなく、後者は王様に忠誠を誓う専属の騎士団が存在する。一部例外もあるが……。
第三点は政治に関すること。前者は町の人を代表して都長が政治に参加できるが、後者は参加できない。
以上この三点が首都と王都の違いである。それでは話を戻すとしよう。

 黙ったままで考えているルイを横目でちらり見て、エレミールが手を挙げる。

「はい、そこの女の子どうぞ」

「わたしはエレミールよ。今度からはそう呼んでね。質問は“どうして潜入しなくちゃならないか”よ。どうどうと正面から入ればいいじゃない」

 エレミールは立ち上がって、向かい側に座るミフレを見て訝しげな表情で言った。その問いに対して眉をひそめるミフレが答えるよりも早く、黙って聞いていたルイが不意に言葉を漏らす。

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